時の試練を越えるもの
近くのジャスコに行ったら、青海省大地震募金の箱がおいてあった。その募金の行き先は駐日中国大使館。つまり、中国政府。
ちなみに、一昨年のアバ大地震(通称四川大地震)の際、世界中から集まった募金は、80パーセントは中国政府の懐に入ったそうで、果たしてどれだけが現地の本当に困っている人に届いたのか疑問視されているそうな。
2009/08/20 中日新聞朝刊【北京=朝田憲祐】
中国各紙によると、昨年5月の中国・四川大地震で寄せられた義援金767億元(約1兆600億円)の約80%が政府の収入になっていたことが、清華大学 NGO研究所の調べで分かった。市民からは「被災地復興に本当に使われたのか、使途が不透明だ」と疑問の声が上がっている。
同研究所の調査によると、各地の政府に寄せられた義援金はそのまま政府の“臨時収入”になったほか、中国赤十字や中国慈善会などに集まった寄付金の大部 分も政府に流れたという。
地震発生直後には300以上のボランティア団体が支援活動を行った。いずれも資金不足に苦しんだというが、中国民政省幹部は「社会的信用の低いNGO組 織には義援金を任せなられない」と、政府予算に義援金を組み込んだことの正当性を強調する。
一方で、同研究所のトウ国勝助教授は、中国紙の取材に「政府が義援金を使った場合、効率が悪く、効果も少ない。それは市民の要望に耳を貸そうとしないか らだ」と批判。中国慈善基金会幹部は「政府の金の使い方をチェックできないことが最大の問題だ」と指摘する。
こういうのを見ると、何割現地につくかわからない寄付よりも、伝統に則ってインドの再建チベット僧院にお布施した方が、チベット文化の維持に貢献するし、自分の後世もよくなるような気がする。ただし、このことは寄付をするのが悪いことであることを意味しない。かりに現地にけっして届かないお金であっても、純粋な心でその募金箱にお金を投じた人の行いが貴いことに変わりない。途中でそれをくすねる人々が悪業を積んで、無間地獄に堕ちるだけ。
さて、突然ですが、佼正出版から『アジア仏教史』の新版、『新アジア仏教史』(全15巻)がでます。チベット仏教の歴史はこの中の九巻ですが、第一巻目のインド仏教史とともに、今回新しくでることとなりました。ちなみに、それ以外の巻は随時発刊していくそうな。
まだアマゾンとかでは買えませんが出版社のサイトでは買えます。ダンナのブログにも紹介記事(目次の詳細と序文)があります。
『須弥山の仏教世界』
各章タイトル 及び 執筆者
古代王朝 岩尾一史
後伝仏教の諸相が 石濱裕美子と松川節
宗派概説 福田洋一・伏見英俊
チベット仏教の現在 小野田俊蔵
チベットの美術 森雅秀
現代チベット仏教の諸相 野村正次郎・平岡宏一・三宅伸一郎
ダライ・ラマ十四世 石濱裕美子(笑)
ちなみに、私のスタンスをここで明らかにしておきましょう。
わたくしは変わらないものブレないもの、長いときをもってしても淘汰されない、普遍的なものに敬意を表するものである。六十年前、中国軍がチベットを占領した時、「チベットはもう終わった」と言われ、ダライ・ラマは「封建領主」レッテルを貼られてさげすまれた。今でもなお、そのようにいう人はいる。
しかし「終わった」「終わった」と言われつつも、また、何もかも失っても、その伝統を維持しつづけている、それを可能としているチベット仏教の驚異の伝統に敬意を表したい。「お前はもう古い」と叫びたてるのは簡単。そういえば、その人は自分が先端にいると自信がもてるのだろう。
しかし歴史はこう我々に教えてくれる、伝統も過去も切り捨てたところから生まれてくるものはロクなもんでないことを。
ちなみに、一昨年のアバ大地震(通称四川大地震)の際、世界中から集まった募金は、80パーセントは中国政府の懐に入ったそうで、果たしてどれだけが現地の本当に困っている人に届いたのか疑問視されているそうな。
2009/08/20 中日新聞朝刊【北京=朝田憲祐】
中国各紙によると、昨年5月の中国・四川大地震で寄せられた義援金767億元(約1兆600億円)の約80%が政府の収入になっていたことが、清華大学 NGO研究所の調べで分かった。市民からは「被災地復興に本当に使われたのか、使途が不透明だ」と疑問の声が上がっている。
同研究所の調査によると、各地の政府に寄せられた義援金はそのまま政府の“臨時収入”になったほか、中国赤十字や中国慈善会などに集まった寄付金の大部 分も政府に流れたという。
地震発生直後には300以上のボランティア団体が支援活動を行った。いずれも資金不足に苦しんだというが、中国民政省幹部は「社会的信用の低いNGO組 織には義援金を任せなられない」と、政府予算に義援金を組み込んだことの正当性を強調する。
一方で、同研究所のトウ国勝助教授は、中国紙の取材に「政府が義援金を使った場合、効率が悪く、効果も少ない。それは市民の要望に耳を貸そうとしないか らだ」と批判。中国慈善基金会幹部は「政府の金の使い方をチェックできないことが最大の問題だ」と指摘する。
こういうのを見ると、何割現地につくかわからない寄付よりも、伝統に則ってインドの再建チベット僧院にお布施した方が、チベット文化の維持に貢献するし、自分の後世もよくなるような気がする。ただし、このことは寄付をするのが悪いことであることを意味しない。かりに現地にけっして届かないお金であっても、純粋な心でその募金箱にお金を投じた人の行いが貴いことに変わりない。途中でそれをくすねる人々が悪業を積んで、無間地獄に堕ちるだけ。
さて、突然ですが、佼正出版から『アジア仏教史』の新版、『新アジア仏教史』(全15巻)がでます。チベット仏教の歴史はこの中の九巻ですが、第一巻目のインド仏教史とともに、今回新しくでることとなりました。ちなみに、それ以外の巻は随時発刊していくそうな。
まだアマゾンとかでは買えませんが出版社のサイトでは買えます。ダンナのブログにも紹介記事(目次の詳細と序文)があります。
『須弥山の仏教世界』
各章タイトル 及び 執筆者
古代王朝 岩尾一史
後伝仏教の諸相が 石濱裕美子と松川節
宗派概説 福田洋一・伏見英俊
チベット仏教の現在 小野田俊蔵
チベットの美術 森雅秀
現代チベット仏教の諸相 野村正次郎・平岡宏一・三宅伸一郎
ダライ・ラマ十四世 石濱裕美子(笑)
ちなみに、私のスタンスをここで明らかにしておきましょう。
わたくしは変わらないものブレないもの、長いときをもってしても淘汰されない、普遍的なものに敬意を表するものである。六十年前、中国軍がチベットを占領した時、「チベットはもう終わった」と言われ、ダライ・ラマは「封建領主」レッテルを貼られてさげすまれた。今でもなお、そのようにいう人はいる。
しかし「終わった」「終わった」と言われつつも、また、何もかも失っても、その伝統を維持しつづけている、それを可能としているチベット仏教の驚異の伝統に敬意を表したい。「お前はもう古い」と叫びたてるのは簡単。そういえば、その人は自分が先端にいると自信がもてるのだろう。
しかし歴史はこう我々に教えてくれる、伝統も過去も切り捨てたところから生まれてくるものはロクなもんでないことを。
COMMENT
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月夜野 | URL | 2010/04/24(土) 02:03 [EDIT]
月夜野 | URL | 2010/04/24(土) 02:03 [EDIT]
使途不明な募金は多いですよね。
チベットハウスが募金を始めましたが私は直接、玉樹の人々のためにならなくてもブルーブックなど信頼できる募金先に協力していくつもりでいます。それが縁でつながって玉樹で苦しむ方々の癒し・助けになれば嬉しいです。
チベットハウスが募金を始めましたが私は直接、玉樹の人々のためにならなくてもブルーブックなど信頼できる募金先に協力していくつもりでいます。それが縁でつながって玉樹で苦しむ方々の癒し・助けになれば嬉しいです。
先生、お疲れ様です。
長野の西方寺のチベット大仏堂を飾る壁画ですが、8大菩薩をダラムサラからやってきたタンカ絵師3名の方と、宮坂宥明さんの4人体制でフルピッチで制作中。時々、差し入れを兼ねてお訪ねしています。4人の皆さんとお会いすると癒されます。
6月、先生は長野にいらしゃることと思いますが、お会いできることを楽しみにしています。
長野の西方寺のチベット大仏堂を飾る壁画ですが、8大菩薩をダラムサラからやってきたタンカ絵師3名の方と、宮坂宥明さんの4人体制でフルピッチで制作中。時々、差し入れを兼ねてお訪ねしています。4人の皆さんとお会いすると癒されます。
6月、先生は長野にいらしゃることと思いますが、お会いできることを楽しみにしています。
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宇宙犬 | URL | 2010/04/26(月) 10:34 [EDIT]
宇宙犬 | URL | 2010/04/26(月) 10:34 [EDIT]
先生、ニュースを有難うございます。
差し支え無ければ、mixiでご紹介させて下さい。
個人的には、中国政府による募金のみならず、中国人留学生による募金活動まで、習い性で疑いの目で見てしまう自分が哀しいですが、チベタン(しかも直接話したことのある人)による募金であれば、信じて協力したいと存じます。例えばこちら。
http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20100425ddlk13040131000c.html
マルクス主義的歴史観とは謂わば、旧=弊と決めつけることでしか成立しない、妄想病のようなものだと考えます。
昨晩NHKスペシャルで『上海 百年の物語』と題する特集を視ました。
http://www.nhk.or.jp/special/onair/100425.html
戦争に比べ、文革の凄まじさについての紹介は遠慮がちに感じられ、歯痒く思われる面もあったのですが、嘗ての紅衛兵を、他の人間が得意満面で罵倒するシーンは印象的でした。
あれはまさに「旧弊」に対する切り捨てでした。
物質的な世界のみを信じ、他人を責めることで自らの地位やアイデンティティを保持したつもりになり、臆面も無く「復讐」という言葉を口にする中国人たち。
TVで紹介されているのは、切り取られた肖像でしかありませんが、それだけでも「なんて可哀想な国なんだろう」と思ってしまいます。
差し支え無ければ、mixiでご紹介させて下さい。
個人的には、中国政府による募金のみならず、中国人留学生による募金活動まで、習い性で疑いの目で見てしまう自分が哀しいですが、チベタン(しかも直接話したことのある人)による募金であれば、信じて協力したいと存じます。例えばこちら。
http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20100425ddlk13040131000c.html
マルクス主義的歴史観とは謂わば、旧=弊と決めつけることでしか成立しない、妄想病のようなものだと考えます。
昨晩NHKスペシャルで『上海 百年の物語』と題する特集を視ました。
http://www.nhk.or.jp/special/onair/100425.html
戦争に比べ、文革の凄まじさについての紹介は遠慮がちに感じられ、歯痒く思われる面もあったのですが、嘗ての紅衛兵を、他の人間が得意満面で罵倒するシーンは印象的でした。
あれはまさに「旧弊」に対する切り捨てでした。
物質的な世界のみを信じ、他人を責めることで自らの地位やアイデンティティを保持したつもりになり、臆面も無く「復讐」という言葉を口にする中国人たち。
TVで紹介されているのは、切り取られた肖像でしかありませんが、それだけでも「なんて可哀想な国なんだろう」と思ってしまいます。
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宇宙犬 | URL | 2010/04/26(月) 10:47 [EDIT]
宇宙犬 | URL | 2010/04/26(月) 10:47 [EDIT]
あ…申し訳ありません。
わたくし、自分でmixiに紹介しておりました("四川"地震トピック2内に)。
大変失礼致しました。
わたくし、自分でmixiに紹介しておりました("四川"地震トピック2内に)。
大変失礼致しました。
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Hisano | URL | 2010/04/27(火) 13:37 [EDIT]
Hisano | URL | 2010/04/27(火) 13:37 [EDIT]
募金の80%が、政府の収入というのは、「やはり」という感じですね。
海外からの人的支援は全て断り、「玉樹自然観光地域化に向けて再興する」というコメントを出したり…
復興に政府が尽力しようとしているとは、とても思えません。
それにしても、募金を使途不明にすることで、政府の信用が世界的にも失墜して行く事に、いい加減気が付いても良いのでは?
海外からの人的支援は全て断り、「玉樹自然観光地域化に向けて再興する」というコメントを出したり…
復興に政府が尽力しようとしているとは、とても思えません。
それにしても、募金を使途不明にすることで、政府の信用が世界的にも失墜して行く事に、いい加減気が付いても良いのでは?
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シラユキ | URL | 2010/04/27(火) 20:46 [EDIT]
シラユキ | URL | 2010/04/27(火) 20:46 [EDIT]
>月夜野さん
人の善意につけこむサギっていうのはもっとも悪質ですよね。しかし、それが政府単位になるとサギではなく政策になるのだから、物事は大きくなればなるほどその弊害は見えにくくなるということなんでしょうか。
>Wakuiさん
西方寺のチベットのお堂もいよいよ完成間近なのですね。昔、パンチェンラマ三世が1780年に北京に行った時も主な仕事は落慶でした(笑)。高僧が巡錫するのに合わせて新しいお寺や仏塔を落慶するのって、伝統に則っていて個人的にはとても嬉しいです。
>宇宙犬さん
そうなんですよ。過去や伝統を切り捨てるのって、結局は「オレの好き勝手やる」という、混乱の世界を生むんですよね。中国の建国も、文化大革命も、廃仏毀釈もまさにそれ。
>Hisanoさん
中国の作る観光地って、何か今までの例から鑑みてとてつもなくしょうもないものになりそう。昔のままにきっちり再現されている世界が実はもっとも観光客のみたい世界なんですよね。
人の善意につけこむサギっていうのはもっとも悪質ですよね。しかし、それが政府単位になるとサギではなく政策になるのだから、物事は大きくなればなるほどその弊害は見えにくくなるということなんでしょうか。
>Wakuiさん
西方寺のチベットのお堂もいよいよ完成間近なのですね。昔、パンチェンラマ三世が1780年に北京に行った時も主な仕事は落慶でした(笑)。高僧が巡錫するのに合わせて新しいお寺や仏塔を落慶するのって、伝統に則っていて個人的にはとても嬉しいです。
>宇宙犬さん
そうなんですよ。過去や伝統を切り捨てるのって、結局は「オレの好き勝手やる」という、混乱の世界を生むんですよね。中国の建国も、文化大革命も、廃仏毀釈もまさにそれ。
>Hisanoさん
中国の作る観光地って、何か今までの例から鑑みてとてつもなくしょうもないものになりそう。昔のままにきっちり再現されている世界が実はもっとも観光客のみたい世界なんですよね。
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