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白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2021/01/22(金)   CATEGORY: 未分類
映画『羊飼いと風船』を観て
 ペマ・ツェテン監督の『羊飼いと風船』が2021年1月22日から一般公開となる。『ペマ・ツェテン作品集 風船』(2020年 春陽堂書店)の映像化である。第20回の東京フィルメックスに『気球』の題名で出品され、最優秀作品賞を受賞している。

 テーマはチベットの社会の伝統的な価値観と現代化の相克を女性視点で描いたものである。宗教的な価値観が女性により多くの負荷を背負わせてきたことについて、このクリスチャントゥディの同映画評が素晴らしくまとめており、共感すること多し。

一方、別の方は主人公の女性が「生まない」という選択肢を選ぼうとしたことを「女性の覚醒」と表現していたが、夫や息子に泣かれて本人も苦しんでいて「覚醒」という前向きな表現は少し違う気がした。

この映画の背景にある社会状況はここ数日のニュースを読解するとより深く理解できる。

1月19日にアメリカのポンペオ国務長官が中国政府がウイグル自治区で行っているウイグル女性に対する不妊手術などの政策を「ジェノサイド」と認定し、これに対し1月21日に、在米中国大使館が「[中国政府の産児制限政策のおかげで]ウイグル女性は「生む機械」から解放された」とツィートしてアカウントを凍結された事件この二つである。

ロイターの記事がこの二つをよくまとめているので以下に引用する。

ツイッター、在米中国大使館のアカウント凍結 ウイグル巡る投稿で

1 Min Read ロイター
[上海/北京 21日 ロイター] - 米ツイッターは、在米中国大使館のアカウントを凍結したと明らかにした。新疆ウイグル自治区における中国の政策を擁護した投稿が、「人間性剥奪」を禁じる同社の規約に違反したためとしている。
 1月21日、米ツイッターは、在米中国大使館のアカウントを凍結したと明らかにした。写真はニューヨークで2016年9月撮影(2021年 ロイター/Brendan McDermid)
中国大使館のアカウントには今月、人民日報が報じた調査を引用し、ウイグル族の女性はもはや「子作りの機械ではなくなった」などとする書き込みがあった。
ツイッターはこの投稿が表示されないようにする措置を講じた。大使館のアカウントには1月9日以降、新しい投稿はない。
ポンペオ前米国務長官は政権交代直前の19日、中国が新疆ウイグル自治区でウイグル族などイスラム教徒の少数民族に対し「ジェノサイド(民族大量虐殺)」を犯したと認定。バイデン政権もこれを支持する立場を示した。
ツイッターの対応について、バイデン政権のコメントは得られていない。
同社の広報担当者は21日、「問題のツイートについて、人間性の剥奪を禁じる規約に違反したため措置を講じた。この規約では信教や社会階層、年齢、障害、病気、国籍、人種、民族を理由に特定の人々の人間性を奪うことを禁止している」と説明した。
ワシントンの中国大使館は現時点でコメントの要請に応じていない。ツイッターは中国国内でブロックされているが、同国の外交官や国営メディアの間では使用が広がりつつある。

中国外務省の華春瑩報道官は21日の定例記者会見で、当局はツイッターの措置に当惑していると述べた。
中国は、ワシントンのシンクタンク、ジェームズタウン財団が昨年公表した報告書の中で、イスラム教徒の少数民族に対し不妊手術や妊娠中絶を強制していると指摘された。中国外務省はこれについて、根拠のない誤った報告だとして否定している。(引用終り)


 この映画において四人目の子供を生むか否か主人公の妻が悩むのは、「遊牧民の生活においては女性の仕事が苛酷でありこれ以上の負担は無理であること」また「四人目は政府に罰金をとられるためすでにいる子供に教育をつけることが難しくなる」という理由からである。前者は女性に多くの仕事をおわすチベット社会の因習であり、後者は経済問題である。妻は伝統的な価値観=転生思想を否定したいがためにこどもを生むことを拒否しようとしたわけではない。現実に背に腹は代えられなかったのである。

 転生を信じる社会においては、愛する人がなくなっても家族になって戻ってくるという考え方は非常に前向きな効果を生んでいる。これは必ずしも現代化の阻害要因とはいえないであろう。ペマツェテン監督は中国国内で映画制作を続けていることから、認可コードにふれないためによりテーマを普遍的(チベットの伝統と現代化の超克) にしており、それは作品の質をあげるのでよい側面もあるのだが、背景にある特殊事情を察してあげることも忘れてはならないと思う。

 伝統的な価値観が現代的な価値観に転換することは、ウイグルのように中国政府の政策として強制的に行われている場合もあるのである。

 ちなみに、同1月21日、ジェノサイド認定を発表したポンペオ国務長官他28人に対して中国政府は報復として制裁を科すと発表した。

 私見を述べれば、私は伝統的を価値観をすべて是とはしないが、それを変化させるのはあくまでも当事者の自由意志でなされることが前提だと思う。
 
 最後に、三月から岩波ホールでも『映画で見る現代チベット チベット映画特集』2021年3月13日(土)~4月2日(金)がはじまり、ソンタルジャ監督の『陽に灼けた道』『ラモとガベ』『草原の河』『巡礼の約束』が順次公開されます。詳しくはこちらをどうぞ。




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DATE: 2021/01/13(水)   CATEGORY: 未分類
別の惑星に転生(ラノベではない)
新年初めての投稿となりました。

私の新年はと言えば、二日にふぐさしをたべた後にお腹壊して寝込み、五日にはパソコンが突然死し、年末から正月までにかけて資料から取った研究メモが全部とび、その後はメモの復元に励むというさえないものでした。

 しかし連年凶をひいていた大圓寺のおみくじは吉となり、今年後半には人生に改善がみられるとのこと。やったー! 普段からよくいく地元の神社二つ、不思議なことに別々にひいたお神籤が同じ番号、同じ内容のやはり「吉」(おみくじの仕入れ元が同じなのだろう)。かりに100種類のお神籤あるとすると同じみくじをひいた私は10000分の一の確率をひいたことになり、今年のくじ運を使い切った感満載。

 今日は今日とて、使用済みトナーをリサイクルにだすために郵便局にいったら閉まっている。「平日正午に休みはありえないだろ」とよく見ると、入り口の張り紙に「窓口業務をしていた社員に陽性者がでたので1/4から休業しています」とのこと。どーすんだよこの荷物! と困っていると、向かいのお茶屋さんが「うちゆうパック扱ってますよ〜」と呼び込まれた。こうやって地道に局の閉鎖を知らずにきた客を向いのお茶屋さんは地道に店に呼び込んでいたのであった。なんというか今年も多難な予感がする。
 
 さて、新年初投稿は「ダライラマ秘話」を恒例としていたが、今年は昨年暮れから新年にかけての現ダライラマ法王のお話しをとりあげてみる。昨年12/17 のエントリーで述べたように、ダライラマ14世は現在温暖化防止活動に力をいれている。年明けの1月10日にも環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんやmind & life institute の科学者たちとこの問題で公開対話を行っている。
 
 日本では環境の話をすると「経済はどうなるんだ」と反射的に返す方がいるが、地球全体が明らかにおかしくなっていて、すでにもう後戻りできない時点(point of no return) まできているという科学者すらいる時、地球に住めなくなったら経済以前だろと思う。昨年コロナで人の流れがとまり、人間の出す二酸化炭素の排出は減ったものの、干ばつによっておきた山林火災によって結局二酸化炭素量は減らず。二酸化炭素もメタンも史上最高値を記録。気候変動は当初の予測よりも速く進み、加速すらしている。
 
 このような報道を受けてかどうかは不明だが、ダライラマの言動もかなり変わってきたような気がする。一例として昨年末12月27日、アメリカ在住のチベット難民向けたダライラマ法王のオンライン対話をみていきたい。この中で若いチベット人たちの「気候変動が進む世界で若者はどうしたらいいのか」という質問に答えてダライラマざっくりいうと以下のような発言をされた。

ダライラマ「[まずは気候変動をとめるための] 対策をとりなさい。でもこれから40年、50年たったら気候変動はさらにすすむでしょう。専門家たちは今後いまより深刻な状況になるといっています。チベット高原も環境破壊が加速しアフガニスタンのような荒涼とした地になると予測しています。

 世界は生じ(成劫)、一定期間存続し(住劫)、壊れ(壊劫)、そして空になる(空劫)と、再びまた世界が生じ、一定期間存続し、壊れ、また空になるを繰り返してきました。

 これは地球だけに起きるのではなくこの銀河にある惑星のすべてに起きることです。自然の摂理です。
地球温暖化も自然の法則です。 生物の意識はこのような環境の変化とは無関係に継続するので、もし地球が滅亡しても私たちは別の惑星の生物に転生します。この銀河には人の住める星は他にもあるでしょうから。私たちは転生するので来世そのような惑星に世を受ける可能性があるわけです。

 だから私たちは環境の保全に関心を持ち続けながら、いつしかここに住めなくなることもあり、それは自然の摂理なのです。生成の時期があり、存続の期間があるのなら、滅びに向かう期間も必ずやってきます。この三千大世界にも生成の時期があり、存続の時期があり、滅亡の時期がある、それが自然なのです。

 仏の教えも[意識が続く限り]存続していきます。別の惑星でも仏教を実践していくようにしていけば、地球が滅亡したらどうしようかと余計な心配をする必要はまったくないんです。考え方の視点が大きければ大きいほど、狭い視野で様々に思い悩むことはなくなります。狭い視野であれこれ思い悩んでいたら、ささいなことで落ち込んで前向きにものを考えられなくなるのです。

 こういうことです。わかりましたか?


 このお話は文殊師利大乗仏教会によって翻訳・字幕が付されて以下のyoutubeで見られます。
 
https://www.youtube.com/watch?v=Er0lQdyjUUw&feature=youtu.be

https://www.youtube.com/watch?v=HjoraRUArQo&feature=youtu.be

 質問者はチベット人であるため、ダライラマは仏教的な世界観(永劫回帰する世界、輪廻転生)を前提に答えている。輪廻転生は仏教に限らず古代ギリシアなど多くの文化が認めていた考え方であり、この思想に基づくと、生き物の意識は外部世界の転変にかかわらず必ずどこかにまた肉体をもって生まれることになる。

 注目すべきは、質問者が「温暖化に対して若い世代どうしたらいいでしょうか? 」と具体的な質問をしているのに、ダライラマは対策について述べず、壮大な宇宙生滅・永劫回帰の話題で返していることである。これまではこのような質問をうけたダライラマは「人間の作り出した問題は人間が解決できます」とおっしゃっていたのに、今回その言葉がでてきていない。それは質問者がチベット人だからか、それとも・・・。

 このダライラマの言葉を理解するために、シャーンティデーヴァの記した『覚りへの道』「忍耐の章」からの「対処のしようがある問題なら、全力で問題解決にあたれ。何も手立てがないなら思い悩んでも仕方ない。前を向いて明日を考えよう」という言葉を理解しなければならない。『覚りへの道』は8世紀のインドの仏教者シャーンティデーヴァが記した菩薩の生き方を示した書であり、ダライラマが好んで引用するものである。

 この言葉を鑑みれば、「世界が滅びに向かうのも自然の理である、思い悩んでも仕方無い。銀河のどこかの環境破壊のすすんでいない惑星に転生しよう」というダライラマの発言は、温暖化はもう手の施しようがない、といっているのと同じになる。

 このお話しを聞いて、何というか来世について考えてしまった。気候変動がもう取り返しのつかない時点にいたっているのなら、仏教用語でいう壊劫にはいっているのなら、確かに来世は環境破壊がすすんだ地球に生まれるよりも、別の惑星に生まれたい。まだ人間が発生していない、発生していても産業革命前の自然が破壊されてない、緑ゆたかな惑星に人でなくていい鳥になって生まれたい。

 新年そうそう来世について考えることになった、ダライラマの法話であった。
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