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白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2011/11/11(金)   CATEGORY: 未分類
法王会見の質問内容に脱力
 被災地での法要を終えたダライラマは7日に離日し、次の滞在地であるモンゴルに向かった。
 最終日、ダライラマ法王は自由報道協会という会(記者クラブに反対するフリー・ジャーナリストが立ち上げた会)の主催で記者会見を行った。その模様はニコニコ動画やユーストリームで誰でも見られる形でリアルタイムに公開されたので、多くの人の目に触れることとなった。

 わたしは最初ニコ動で見ようとしたら視聴者が多すぎてはじかれ、プレミアム会員にならないとダメと言われたので、ユーストリームの方で見た。ちょうど、日本赤軍の重信房子の娘さんとかがパレスチナ問題について法王に質問するところから見だした。後ですべての内容がネットにアップされたので、最初の方も知ることができた。

 まず、最初法王から今回の来日の目的が高野山大学における灌頂であること、また、震災49日法要の時と同じく、津波・地震の被災者にメッセージを送るためであることが述べられ、
 日本は数々の悲劇を乗り越えてきた国だから、今度もできるはずだ。起きてしまったことにとらわれず、ネガティブにならず、前向きになれ。人間の価値に必要不可欠なことは、〔敵をも〕許すこと、他者を愛すること、自分を律することである。この美徳は宗教も説くが、倫理・道徳も説くところである。この人間の価値を十分に発揮しながら、今こそ〔天災で失った〕家を建て直すときだ。

 ジャーナリストの使命は真実・事実を伝えることです。チベットで起きたことを、「帝国主義や封建社会から解放してやった」という人もいれば、「チベット人の文化的な虐殺」であるという人もいます。いろいろな意見がありますが、ジャーナリスの方はぜひチベットにいって事実を見てきてください。解放なのか、虐殺なのか、その事実を調べてきてください。また、世の中で宗教・見解の相違で争いが起きないように、倫理観をもった報道をしてください。
という旨のお話があった。

 そのあと質問を受ける段になり、イタリア人のジャーナリスト、ビオ・デミリア氏が、原発事故の話をし、取り残された動物たちの遺体写真などをダライラマにみせて、直訳「法王は原発に賛成だというが、仏教では動物も大切な命だろう。その命がこのような悲惨なことになっているのに、平気なのか」という質問をした。

 すると法王は「ものごとは全体的(holistic)に見ねばならない。自然エネルギーといっても、ダムを作れば自然を破壊するし、火力発電は二酸化炭素を増やす。代案があれば原発を廃するのもいい。一つのものが使いようによって利器にも凶器にもなるように、原子力も十分な安全策を講じれば発展途上国の人に安価なエネルギーをもたらす利器となり、悪用されれば広島の原爆のような凶器にもなる。ただし、あなたたちが話し合ってもう原発はいらないということになったら、それでいい」という旨の答え。

 そして、次が日本赤軍の兵士の娘重信メイによる「パレスチナ人はチベット人同様、国を奪われて悲惨な状態であり、国連への加盟もままならない。そのことについてどう思うか」という質問。古くから法王がPLOなどと距離をおいて、イスラエルの背後にあるアメリカと仲良くしていることに対する、おそらくは不満があってこのような質問をしたのだろう。

 これに対して法王は「あまりに複雑な問題で、大きな力が加わっていて、コメントできない」

 ちなみに、法王はアメリカに対してもブッシュがアフガン戦やイラク戦をはじめるときには公開書簡や声明文のような形で反対しているし、アメリカの格差社会にたいしても物申している。日本政府よりゃよほどはっきりアメリカにものを言っているよ。

 そのあとも「世界中で格差を反対する若者の反政府デモが起きています。これからどうなるのでしょう」

 法王「為政者が道徳的に政治を行えば、国民との間に信頼関係が生まれる。しかし、責任ある立場にいる人が腐敗していると、不信感、猜疑心から反政府的な動きもでてくる。指導的立場にある人の倫理観が重要だ」という旨のお答え。

 また、「TPPに参加したら日本はどうなるんでしょう。日本はアメリカ帝国主義にも中国帝国主義にも与したくありません」みたいな質問に、法王「TPP、よく知らん。」と一蹴。

 また、元NHKとかいう人が「去年尖閣沖で日本の海上保安庁の船が中国の漁船にぶつけられて、その映像を政府が隠し、それを一海保職員がYoutubeに流した。この事件をどう思うか」(暗に、中国ひどいよね、それをかばった政府もひどいよね、と同意を求めているような。)

 法王「そりゃ日本の問題でしょ」(爆笑)

 ちなみに、よい質問としてはチベットで中国政府に抗議して僧侶の焼身自殺が続いていることに対する質問。これはルンタが翻訳しているのでここごらんください。

 あとは、スピリチュアルテレビの「法王のおっしゃるようにすべての人が悟りを開けば世の中は平和になるんですよね、具体的には何からはじめればいいですか」という質問もまあましだった。

 何にしてもこの二つ以外の質問には情けなーい気持ちになった。

 まず、 TPPに参加したら将来どうなるか、とか、世界中の格差デモがこれからどうなるのか、ってダライラマに未来を予言してもらいたいタイプの質問は完全に無意味。

  このジャーナリストに限らずわれわれは、自分の感じている不幸・不安を、すべて外部からくるものと考えがちである。自分の能力・努力の不在は棚に上げ、親のせいから始まって、学校のせい、社会のせい、政治のせい、国のせい、と、問題はすべて外にあり、外部要因が自分たちに何をもたらすか、という視点からしかものを考えない。だから、TPPが日本人に何をもたらすか、原発が何をもたらすか、という問い方になる。

 しかし、仏教ではそもそもすべての問題は外からくるものではなく、自分の内側(心のあり方)からくるものであると考える。

 つまり、どんなすばらしいチャンスでも利己的な動機からそれをはじめれば客観的に成功しても人間の価値が下がるので成功とはいえず、仮に利他的な動機でそれに取り組んでいれば、客観的に何も得ることがなかったしても、人間の価値は損なわれていないので成功といえる。

 つまり、ある一つの事を倫理的・道徳的・利他的な動機をもってはじめ、努力を続けてあたっていけば、どう転ぼうがそれは正解であり勝利なのである。だから、自分がどのような姿勢でものごとに関わるかという視点なしで、ただ、原発ひどいでしょ、格差でもはどうなるの、TPPに入ったらどうなるのかしら、などと聞いても意味ないのである。

 しかし、ここでジャーナリストを少しフォローすれば、日本には神様にお伺いをたてて、吉凶を占ったりする文化があるので、ダライラマという聖なるものを前にして、つい自分たちの悩みを語ってしまったのかもしれない。まあそれだったら、法王に聞く前に亀の甲羅でも焼いてヒビでも見てろと。

 それであるのに、原発に関するダライラマの答えをかってに「原発推進」だととらえて、「法王は勉強がたりない」「失望した」とかツイッターで騒ぐひとたちを見て、「うわ、これがまさに衆愚」とあきれた。チベットに侵入してきた解放軍が、世界最高レベルの論理学を身につけたお坊さんたちを「勉強がたりない」といって社会主義教育をさせた、あれと同じ滑稽な図式である。

 お坊さんは知識ではなく智慧を育てる人たちである。そして、智慧はあんたたちの言うこじゃれた知識(勉強)よりもはるかに人類の幸せに寄与してきた(笑)。彼は倫理と道徳をもってより大きな視点からわれわれに道を示しているのである。そこんとこがわかんない人は法王リテラシーがまだまだ。

 今回の記者会見に限らず、法王の講演会ででる質問もその多くは実にとほほなものである。

 原発、パレスチナ質問のように自分の考え方の枠組みを法王におしつけて、それへの賛否をとうタイプ、また、「頭ではわかっていてもどうしても法王のいうようにできないんです」という、こまったちゃん質問。サポーターから見ると「アンタのその質問、たぶん猊下の人生でそれに答えるの五万回目よ」というくらい、もう同じことの繰り返し(まあ、質問は同じでも質問する人は毎回別の人なので、仕方ないとこもあるけど 笑)。

 実は、ダライラマの人生を、その考え方をよく知る人ほど、質問なんてする気はおきなくなるのである。それは、法王の考えは「おのれの人格を向上させよ、さすればあなたは幸せになる」ということであるから、それを理解した瞬間に、わたしたちが法王に話すことがあるとすれば、「私はこうがんばっています」ということしかなくなり、なかなか威張っていう程の成果が出せないから何も言うことができなくなるから(笑)。

 こういう人たちの発言を見るに付けても、「いい加減、無制限に人から質問受けるのやめてよー」と端から見ていて思うのだが、法王は毎回、実に淡々と誰からの質問もうけつけ、あれれな質問にもとほほな質問にも答え続けている。なので、最近では私はそれが法王のすごさの証明だと思うことにして、質問者に腹を立てないようにしている(ホントよ)。

 では、どのような質問がベストであるのか。それは、法王の今まで人生、人柄、業績をそれを知らない一般の人にも分かるような形で引き出すようなものである。

 1951年、ダライラマはチベットに中国軍が侵攻する中15才で即位した。そして24才でチベットからインドに亡命し(この年は大躍進政策の失敗で中国は餓死者るいるい。ダライラマはよくこの年まで我慢したよ)、そのあと、10万人のチベット人を抱えて、その生活を支え、チベット人のアイデンティティである仏教文化を護り続けてきた。ダライラマは、自らがこれらの苦難によってかえって自分の人間の価値(ゆるすこと、他者を思いやること、自己を節制すること)を育てられたことをことあるごとに述べている。

 ダライラマはこう言いにきたのである。チベット人は国を奪われさすらいの身になっても、絶望や不安に負けずに人間の価値を護ってきた。だから、あなたたちもウツや絶望にまけるな。神でも仏でもない、人の自分ができたことだから、あなたたちにもできる。

 あなたたちも再び立ち上がることができる、そう伝えにきたのである。だから、記者会見でもジャーナリストは法王のそのような強さとすごさを引き出すような質問をすれば、日本人の多くを励まし、多くの人が自らの心のありようを問い直すチャンスを作ることができたはず。

 外部要因に対する不安や不満を口にしながら、絶望と無気力にひたっていても、本人に良い結果がでないだけでなく、周りも巻き込んで不幸になっていく。法王が言うように、今は道徳的・倫理的・前向きになること、そのように心をもっていけるように、少しずつでもできることを今から積み上げはじめること、これしかないのである。
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