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白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2011/03/10(木)   CATEGORY: 未分類
三月のチベサポはちょと過敏
 本日三月十日はチベット蜂起記念日。

 1959年、チベット暦正月に行われる恒例の論理学の最高学位の試験にパスしたばかりのダライラマ十四世の下に、ラサを占領する中国軍営から「三月十日に中国軍営に護衛なしで観劇にくるように」との要請があった。
 それを聞いたチベット人たちは、「如意宝珠(ダライラマの美称)が中国に拉致られる」と、ダライラマの滞在するノルブリンカ宮の周りに集結した。

 中国軍のチベット占領はこれより九年前の1950年に始まっていた。
 精神的な豊かさを追求するチベット人が物質的な豊かさを追求する社会主義・漢人文化と相容れるはずもなく、東チベットから漢人に追われて逃げ込んできた難民たちでその年のラサは一杯であった。そして、中国全土は1958年に始まる毛沢東の失政「大躍進政策」で飢えに包まれていた。

 この時点でチベット人が爆発することは起こるべくしておきたものである。

 というわけで、ダライラマの離宮のまわりにはあっという間にチベット人があつまり、その集団には日を追うごとに秩序ができはじめた。それはあたかも2011年のエジプト・タハリール広場の様相を呈したという。

 中国軍はこの群衆を解散させようと、殺気立っていき、群衆と中国軍との間にたかまっていく緊張を見て、ダライラマは破滅的結末を避けるため、「チベット人が命をかけても守るダライラマ」すなわち自分を彼らの目の前から消すために亡命の途についたのである。

 というわけで、チベット人の亡命社会では、以来、この三月十日に人々はキャンドルをともして集まり、初期はチベットの独立を叫び、80年代後半からはチベットの自治を訴え、ダライラマ14世猊下の恒例のスピーチがある。しかし、本土チベットでは毎年恒例、情報のシャットダウンと公安によるチベット人包囲が築かれる。

 早稲田大学で講義をされている孔子学院の先生方によると、「中国は年々よくなっている」そうだが、客観的な事実として、中国におけるネット検閲やチベット人やウイグル人などの漢人以外に対する抑圧はここ数年幾何級数的にひどくなっている。

 従って、三月十日前後の本土チベットは、今年は「寒いから外国人は入境禁止」「ツイッターもユーチューブもケータイも何かも外につながらないわ」状態になる。そして、主立った僧院にはいつもいる警官が倍増しいや数倍増し。高僧たちはお正月だからといって説法にいくこともままならず(人を集めたら何が起きるか分からないから笑)。


 で、そんな蜂起記念日の前日の九日に、某旅行社でチベット話をした。しかし、この会社、何度目からメールで「ダライラマと政治の話しはできるかぎりしないで」とか言ってきた。
  
 私はぶちきれた(as usual)

「ダライラマぬいてチベットの歴史が語れるか。あんたらの会社はチベット旅行でポタラ宮いって、ダライラマのミイラの入った仏塔の前にいって「これはんんんんの遺体を納めた仏塔です」とか伏せ字にしてガイドするのか?
 あんたたちは「エジプト」とか、「チベット」とかいれて検索すると、「エジプト観光」と「西蔵観光」しか表示しない中国のネットかあっ。

 だいたいこれまで講演内容を指図してきた講演依頼主なんていなかったわ。何様じゃ。
 不愉快な気持ちになって黙っていると、日が近づくにつれて、さらに勝手に演題がつけられ、Ustreamで流すことか一方的に通告されてきて、不快感はいやます。

 怒ってても仕方ないので、七日の月曜日、一応電話して意図を聞いてみることとする(それまではメール)。私は喧嘩せずに穏やかにいくつもりだったが、ダンナ曰く「完全にドスがきいていた」そうな。。
 
 件の担当者「お返事がないのでこっちで判断しました。お客様の中で政治の話しをいやがる人がいるもんですから。先生のお話の内容に指図するつもりはありません。先生のご判断にまかせます」。とのこと。

 そこでまたゲキド。なんじゃその曖昧な「お客様」って表現は。あんたらは「関係する法律に触れた」という曖昧な理由で外国人ジャーナリストを逮捕する中国政府か。

 そもそもダライラマの話を「政治の話し」だといって不愉快になるような「お客様」はチベットに旅行なんていかないわ。そんな曖昧な「お客様の気持ち」のためにオノレは専門家の口にフィルタリングをかけるのか。大体ダライラマを知らないで生きてく「お客様」は幸せか?

 学者はセールスマンじゃないわっ。事実を語るのみじゃあ。チベットはシャングリラで秘境でみたいなイメージを話してほしいなら、自社社員を講師にしろ。新聞記者が専門家の話しを、自分たちの都合で編集したり、削ったりするのと同じで、学者の鬼門じゃあ。

 事実と真実をなめんなよ。

 とここまで書いてきて、よく学生から「先生はいつも何かに怒っている」と言われたことがあるが、確かにそうかもしれない。

 そのようなんことがあったものだから、当日現場にむかう足取りがものすごく重かった。しかし、実際いってみたらメールをくれた担当者はともかく、その上司の方は良識的な人で、いろいろなことをめぐる見解もほぼ私と同じカンカクであり、「お客様」も良識的なご年配の方ばかりであった。

 聞けば去年尖閣の事件があったから、「中国旅行の問い合わせがばったり減りました」「ジャスミン革命やエジプト革命のおかげで、かき入れ時の北アフリカ観光が大打撃」ということなので、たぶん、あのメールを書いた人も、経営戦略上、チベットを夢の世界にしておきたかったのかもしれない。意思疎通のできないあのカンジは個人の資質の問題だろう。

 でも、いくら隠しても、今の本土チベット人が言論の信教の自由も奪われて巨大な刑務所に入っている事実にかわりない。ちゃんとチベットの歴史と文化と現状を知った上で旅した方が、結果としては旅人の満足度は上がるだろう。漢人ガイドが通り一遍の説明をして、おきまりのコースを行くよりも、訪問先のお坊さんとも関係のいいチベット人ガイドと歩いた方が、いろいろなものが見えてくる楽しい旅になるに決まっている。

 大体が何かを隠さないと売れないような商品、いかんだろ、それは。商品のグレードをアップすれば事実と真実を話しても、イヤ逆にそれだから売れるはず。

 BBCが70年代に流した30年代のチベット社会のカラーフィルムをみせながら、絵巻物のような美しいチベットの旧社会について解説する。Ustreamで流していたのを見ていたKさんが。お笑い中継をしてくれていて、私が演台をはなれて画面の方に歩いていって直接指さして説明すると

「先生、マイク放すと無音になるんですってばあ」とか、中継していたことをうちのダンナが帰ったら伝えてくれた(笑)。そりゃ知らなかった。

で、私の話のあと、旅行説明会が続いたのだが、JTBとか風の旅行社さんとかで講演やった時は、旅先の土地を知るためのカルチャー講義と旅行販売は別部門でやっていた。それを一緒にするからこれまでのごたごたもおきたとも言える。

というわけで、蓋を開けてみれば、同じ人間、そんな怒るほどの事でもありませんでした。三月のチベサポはちょっと過敏、そういうまとめ方もできるしもかしれません(笑)。
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