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白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2010/06/14(月)   CATEGORY: 未分類
ヒーローの孤独
最近、ロバート・ダウニー・ジュニアのファンなもんで、封切られたばかりのアイアンマン2を見に行く。ファンになったきっかけは『トロピック・サンダー史上最低の作戦』で黒人になりきる白人の役をした彼に大笑いさせてもらったから。

 前回の彼の主演作『シャーロック・ホームズ』もなかなかよかった。いろいろいう人もいるけど、あれ原作に忠実なんだよね。ヴィクトリア朝の男たちは、じつはとても男臭くて体育会だったからね。

 ネタバレ炸裂で話をさせてもらう。ロバートの役所は巨大軍需産業スターク社のCEO、トニー・スタークである。

 トニーは物理学の天才で20才で事故死した両親の跡を継いでスターク社を相続した。しかし、会社の経営は他人にまかせっぱなしで、自分のラボで発明・研究ばかりしてあとは遊び暮らすという天才肌。そのうち、社内のワルが、トニーの発明した技術を金儲けに利用しようとして、彼を拉致監禁、協力を迫るが、彼は協力するとみせかけて、武装ハイテク・スーツを開発してそれ着て自力で逃げ出す。アイアン・マンとなった彼は社内外のワルをたたきのめす。

 ここまでが前作である。そして今回。アイアン・マンはヒーローとして世界中の人々に慕われている。なにしろどの国にも属さない最強の兵器が民間に存在するため、かえって国家間には平和が保たれ、「世界平和が民営化」されたからだ。

 アメリカ軍はトニーにアイアン・マンの技術をわたすように執拗に要求しているが、アメリカ軍にいまいち信をおけないトニーは(今までのアメリカの行動みたら確かに分からんでもない 笑)、北朝鮮やイランがアイアン・マンの技術をコピーするのは二十年以上かかる、とアメリカ軍の提案を却下する。

 しかし、賞賛の渦の中にいるトニーを嫉妬と怒りによってにらみつけるロシア人がいた。彼はトニーの父ちゃんの研究パートナーだったロシア人ヴァンコの息子イワンである。ヴァンコはかつてトニーの父ちゃんと二人で発明した新技術をヤバイ国に金儲けのために売ろうとし、トニーの父ちゃんにソ連に追い返された。息子イワンは父親のルサンチマンを聞きながら育ったためスターク一族に対する恨みは骨髄に達していた。

 世界平和を考えて国ともガチの勝負をしているトニーに対して、イワンの頭には父ちゃんの受けた屈辱の仕返しかない。同じ天才でも育った環境が違うとこうもその頭の使い道が違ってくるという一例である。

 イワンはペンタゴンの武器商人ハマーを後ろ盾にしてワル・ロボットの戦隊を作り上げる。ハマーはとにかく笑っちゃうくらい無能な実業家として描かれていて、こういうのがペンタゴンの御用商人になっていて、トニーのような天才が協力しないあたりに、アメリカ軍に対する作者の評価がすけてみえて笑える。
 
 しかし、今回最大の敵は、じつはロシアからきたファザコンの復讐魔イワンではない。本当の敵はトニー自身の「自らの死」、そして「父親に愛されなかったという自信のなさ」。

 トニーは前作で監禁から逃げ出す際に自分の心臓にパラジウム・リアクターを埋め込んだのだが、パラジウムの毒素が体にまわってじつはもう長くない。しかし、彼はそのことを恋人でもあり自分の秘書であるミス・ポッツ(グウィネス・パルトロウ)にも、友人の中佐ローズ(ドン・チードル)にも打ち明けられない。

 前者の背後には自分の技術をまもっていく自分の会社があるし、後者の背後には自分の技術をほしがっているアメリカ軍がいるからだ。そこで、トニーはたった一人で苦しみまくる。そして結局、恋人に会社をゆずり。親友にわざと愛想を尽かさせてアイアン・マンスーツを奪わせて軍にわたすことにする。

 トニーはその置かれている立場から、迫り来る死に対して、死の恐怖以外の、世界平和とか、その技術をささえる会社の未来とかも考えなければいけない。恋人にも親友にも自分の不安を話すことのできない絶対的な孤独にある。ヒーローの孤独、これこそがこの映画のテーマなのである。

 そいえば、バットマンも、スパイダーマンも孤独だったのう。

 大きな力は大きな責任を生む。正気の天才は孤独なのである。

 それに比べてバカは楽で良い。ハマーはお金儲けしか考えていないし、イワンは復讐しか考えていないし、軍隊はトニーの技術をパクることしか考えていない。バカは気楽だから世の中のほとんどの人はバカになりたがる。

 今のアメリカで各分野のトップにいる人は多かれ少なかれこの孤独を感じているのだろう。彼らは自分以外の他者のこと、世界のことを考えざるをえない。この孤独はそういうアメリカ人にしか本当の意味ではわからん部分だろうな。アジア人はハマー、とかイワンの立ち位置だからな。

 で、トニーを救うのは結局自分自身なのである。

 トニーが20才の時に死んだオヤジはじつは早熟の天才である息子トニーを愛していた。「私最大の創作品は息子である」という映像を見つけてトニーは親に愛されていたことを知る。さらに、父親が「今の技術では実現は不可能だが、お前の時代には可能となっているだろう」という言葉にインスパイアされて新元素(笑)をつくりだし、副作用の多いパラジウム・リアクターを使わなくてすむようになる。

 父親が死後二十年たって息子を導き、その命を救ったのである。育ちがいいってすばらしいね。死後もその息子をミスリードするイワンのオヤジとは大違い。イワンももっと真っ当な親に育てられていたら、普通にその天才で成功しただろうね。

 というわけで、ヒーローの真の敵は自分の煩悩、そしてそれを救うのもまた自分という、これもまたアメコミの隠されたテーマの一つなのであったった。
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