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白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2009/09/16(水)   CATEGORY: 未分類
ダライラマ亡命までの21日間
先週の末、NHKのアジアンスマイル枠で「チベット子ども村の祈り」が、BS海外ドキュ・ンタリー枠で、「ダライ・ラマ亡命までの21日間」が放映された。

 これまでNHKのチベット特集といえば、中国特派員の暴動中継か、中国の官製ツァーにのっかって中国がのぞむままの映像をとらされたようなもんばかりだった。
 7月14日に放送された「きょうの出来事」でもチベットが特集されたけど、それはトホホな内容であった。

 まず、タイトル「中国のもう一つの火種・チベット公開メディア・ツアーの狙いとは」

で番組ホームページから要旨

 先週起きた新疆ウイグル自治区の暴動で浮き彫りになった中国の民族問題。それを先取りするように去年3月に民族問題に端を発して大規模な暴動が発展したのがチベット自治区だ。これまでチベット自治区の取材は厳しく制限されていたが、暴動から1年以上経った先月、中国政府は外国メディアに対するプレスツアーを実施した。各メディアには必ず当局の担当者が付き、当局が準備した対象だけを取材させるという多くの制約の中で、暴動の起こった寺院や、学校、観光地、チベット人が働く工場などを公開した。この時期海外メディアにチベットを取材させた中国政府の思惑は何か、メディアツアーからかいま見えるチベット自治区の現状はどうか、現地から伝える。出演:川上明人(上海支局記者)

 この要旨だけをみると、大変だったんだなあ、と同情するけど、番組内容はたんに中国政府が選んだ訪問先につれていかれて、彼らが選んだ人にインタヴューした、という"官製ツアー"の報告。

 うろ覚えだけど、缶詰工場では「社長」のチベット人がでてきて、「この最新の缶詰工場では~を作っていて、チベット人~人の雇用が生まれています」とか言ってるし、

 新しいアパートに入ったチベット人のおばあさんが「政府に快適な家をつくってもらいしました」とか喜んでいるし、

 お寺にいってお坊さんが「あの暴動を起こした人は一部の反動主義者です~」言ってたり、なんか「北朝鮮の七日間」みたいな映像ばかり。

 もちろんNHKもナレーションでせいいっぱい抵抗するけど、そういうのってリテラシーがないと届かない。たまたまチャンネルあわせた視聴者は
「中国が未開のチベットの地にたくさん投資をしてチベットの人は喜んでいるのね」と見えても仕方ない造りになっている。

 とにかく気持ち悪い番組だった。

 しかし、先週末の「ダライ・ラマ亡命までの21日間」(オルタス・ジャパン製作)は違った。


 番組冒頭で、中国の中央テレビが製作したここ60年のチベット支配を正当化した番組が流れ、次に、アメリカが製作した、中国のチベット侵略を告発した古いフィルム「失われた国から来た男」(Man from a Missing Land)が流れた時は、中国の反帝国主義とアメリカの反共の空中戦がテーマかよ、と一瞬がっかりしたが、そのあとはもう少しまともだった。

 ダライ・ラマのお兄さんとCIAとの関係とか、1959年のダライ・ラマ亡命の日を存命中の関係者に証言させたりとか、ワシントンの冷戦博物館が集めた資料から当時のソ連と毛沢東の間にかわされた会話とかがとりあげられてた。、

 ダライ・ラマのお兄さんとCIAの関係については『CIAとチベット』というドキュメンタリーがあるし、1959年の亡命直前、ダライラマが譚将軍にあてた手紙の中で、譚将軍が疑念を持たないよう蜂起した民衆を反動主義者とよんで安心させていたこととかは、中国の外文書店からでた宣伝文書集『チベット問題』で知っていたので、とくに目新しいことはなかった。

 でも、1949年の毛沢東・ミコヤン会談で、毛沢東がミコヤンに、「アメリカとチベットがいたるところで"いちゃついている"。注意深くやらねばならない」とチベットという一つの文明をつぶすことを何の良心の呵責もなく語っていたこと

 1959年の毛沢東・フルシチョフ会談でフルシチョフが「ダライ・ラマをなぜインドに逃がした。ヤツには棺がふさわしい」とか言い放ったとか、

 1959年にダライ・ラマが亡命した直後、中央政府が「ダライ・ラマは反動主義者に拉致されたと宣伝せよ」とか命令したとか、


あまりにも薄汚い話ばかりしているのでで身の毛がよだった。


 そしてダライ・ラマの亡命後、ポタラ宮の上に赤旗が翻る当時の映像が流れる。

 このシーンは、独自の文化と体制を有していた一つの文明が、赤旗に象徴される共産党の暴力によって征服されたことを雄弁に示すものであった。

 そして次のシーンでは、「時は現代、チベット人にとってダライラマのいるところがチベットである。チベット難民達はここインドのダラムサラで50年間チベットの文化をまもってきた」

 とちゃんと今のチベットの状況を正確に伝えてくれた(これまでだと西蔵自治区の話はしても、ダライラマやダラムサラ事情についてはガン無視だった)。

 さらに、CIAに関係していたダライラマのお兄さんについても
 「ダライ・ラマはラマ(高僧)ですから一切知らせませんでした。諜報活動は汚れ仕事です。汚れ仕事は俗人がやることです。」という台詞をちゃんと残していて、視聴者がCIAやチベットゲリラとダライ・ラマを関連づけないような配慮を行っている。

 ダライ・ラマの亡命当初からの発言と行動を知っている人なら誰でもそれを疑う人はいないが、確かに何も知らない視聴者への配慮は必要である。

 すばらしい。オルタス・ジャパン!
 
 で、作品の締めの部分では、ダラムサラの難民収容センターにいる亡命者の話であった。去年三月デモに参加して中国軍に撃たれて、一年地下に潜伏して最近亡命してきた人である。
青年の腕に残るなまなましい銃創のアップ。

 そして青年の「中国はチベットに信仰の自由があるといいます。でもダライ・ラマ法王にお会いすることも、それどころか法王さまの写真一枚飾れないんですよ。どこに信仰の自由があるんですか。」との
言葉。

 いやー、時代は変わりました。
 NHKがこんな直球を投げてくれるとは。
 欲を言えば地味なBSでなく、NHKスペシャルでやってほしかった。

 細かい見所を言うと、チベット政府やダライ・ラマ側の映像が流れる時には、フィリップ・グラス作曲のあのクンドゥンの名サントラが流れ、1949年の中国の建国の時、また、1951年に中国がチベット併合を明記した十七条協約をむりやりダライラマに調印させるとか、中国とかソ連とかゴリゴリしているシーンではものすごく不穏な音楽が使われているところが、制作者の意図が分かりやすくでてて善かったです。
 
 真実を伝えてこそ、報道。
NHKさん、ありがとう。ええもん見せてもらいましたわ。
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