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白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2007/02/11(日)   CATEGORY: 未分類
将軍家の菩提寺増上寺に参る
土曜日はゼミ生有志をつれて、歴代将軍様の眠るお寺、きわめつけの「増上寺」を訪問する。

 いまどきの若者に「お寺参りしよう」なんていったってどうせ来やしないから、「今はやりの東京タワーを見に行かない?」といって連れ出す。

 ウソはついていない。

 増上寺は東京タワーのふもとに立っているので、周辺のどこにいてもうっとうしいくらい、東京タワーが眼に入るから。

「牛にひかれて善光寺参り」ならぬ「東京タワーとイシハマにひかれて増上寺参り」である。

 増上寺は神君家康公が江戸に入城して以来の菩提寺であり、歴代将軍の半分はここに眠る(初代家康と三代家光は日光、残りは上野の寛永寺、最後の将軍は谷中の墓地らしい)。幕末の有名な和宮様のお墓もここである。

 戦災でからくも焼け残った巨大な三解脱門をくぐり、本堂で手を合わせ、就職を控えたみなのために、安国殿にいく。
 ここには家康公の念持仏である阿弥陀仏をまつっている。なにしろ天下人の阿弥陀仏であるから必勝祈願にはちょうどいい。みな、真剣に手を合わせて、そのあと、お守りなどを物色している。
 
 来てみれば楽しいもので、最初は「えーわたしは西洋史が好きだから」とか「オレは幕末は興味あっても将軍様の知識はぬけている」とかいっていた学生たちも、歴代将軍の葬儀やお墓やミイラの話をすると俄然興味をもちだしてきた。

 ミイラ。

 それはどんなに歴史に興味ない人でも、なんか興味がわいてくる魔法の言葉。

 以下、生臭い話。

 増上寺の将軍墓地は増上寺をはさんで北と南にあった。今現在この地には北には東京プリンスホテル、南には東京プリンスパークタワーがたち、この墓地はどこにもない。つまり、将軍様の墓地は、昭和三十年代にプリンスホテルの親会社西武に売却された際、改葬されて増上寺の西北の徳川家霊廟にまとめられた。

 当時、将軍たちは死ぬと甕棺の中にいれて土葬され、その霊をまつるみたまやが建てられて、そこには諸大名が石灯籠を無数に献じた。

 御霊やの大半は東京大空襲でやけたが、墓石や石灯籠はそのままのこっていた。すべてがその狭い墓域におさまるわけもなく、将軍や側室や子女のミイラは火葬されて、とくに側室や子女は合葬墓にいれられた。

 将軍たちのミイラは朱がつめてあったので、昨日死んだかのように保存がよかったらしいが、外気にふれたとたんに劣化がはじまったそうである。とはいえ火葬とはもったいない話である。ちなみに、30代の若さでなくなった和宮は、夫君家茂の銀盤写真をだいており、皆の涙をさそったという。

 そして必要なくなった甕棺や焼け残りの霊廟門は西武グループの運営するユネスコ村においてあります(はあと)。石灯籠については、「どんどんもっていってー」と譲っちゃった結果、全国各地にちらばって、所在不明のものも多いとか。石灯籠の行方をおうだけの研究している人もいるらしい。

 庶民となって広大な墓地を維持できなくなった昭和の徳川家の事情、歴史的な墓をそのままにしておきたい増上寺の気持ち、これはわからんでもないが、いやしくも一つの王朝を築いた将軍家の墓(歴史的・文化的価値てんこもり)をつぶして、石灯籠を全国に散逸させて、お墓の上にパークタワーだのホテルだのをたてる西武の気持ちはさっぱりわからん。せめて家康メモリアルパークとか、徳川史料館とか文化施設か公園をつくればよかったのに。

 東京のお寺には数多く大名墓がある。民主主義の時代となった今、大名の子孫たちはこれらの墓を昔のようには維持できずほとんどは無縁と化している。しかし、大半のお寺は経済的にいくら苦しかろうと歴史的文化的な価値と人情を考えて、そのお墓を手弁当で保存している。(土葬の甕棺を掘り出して巨大な石の墓石をどけて更地にするにはお金がかかるというのもあるだろうが。)そう考えてみると増上寺もつらいことだろう。

 周辺の○×寺でうかがった話では、「徳川家の末裔は売却に賛成していたが、増上寺は抵抗していた。しかし、お坊さんは世間知らずなので結局西武グループにしてやられた。西武の凋落は徳川家のたたりとか言われている」という。

 四十年後のたたりというのも気が長い話である。

 調べてみると、西武グループの総帥堤義明氏が逮捕されたのが、2005年3月3日、西武の復活をかけたパークタワーの開業日がそのわずか一ヶ月後だったことがそのような噂をたてられるもとのよう。

 増上寺にあった徳川の遺産は、明治政府の誕生による公有地の没収、政府の失政によって引き起こされた昭和20年のアメリカの空爆、戦後資本主義の嵐によって、この世から消えた。

 こう考えてみると、新旧グローバル化の波が「日本のパルテノン」(徳川家霊廟はかつて外国人からこう呼ばれた)をこの世から消したのだ。

 やーね、グローバルって。
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